少女は、ボクを見るなり、パァッと頬を輝かせて立ち上がった。

「首座さまですね!?」
「え、いや。ボクは……」

「御初に御目に掛ります!私、《木の星》の当主を相勤めます、蔡場篝と申します。この度、正式に勧頂(カンジョウ)を戴き、第五八六世『槐(エンジュ)』の法名(ホウミョウ)を賜りました。以後、宜しくお願い申し上げます!」

 …えーと…?

何やら、矢鱈と漢字の多い挨拶だったけれど…つまり、この可愛らしい女子中学生(と思われる少女)が、《木の星》の現当主で間違いないのか??

「あの~、蔡場…さん?」
「『篝』とお呼び下さい、首座さま!」

 篝は、一層キラキラと瞳を輝かせて答えた。水々しい頬が、ほんのり上気してピンク色に染まっている。

(…可愛い…)

一瞬、見惚れてしまったボクは、慌てて我に返り、場を取り繕った。

「ぁ…じゃあ、えっと…篝ちゃん?取り敢えず座ろうか。立ったままじゃ話も出来ないし。」

「はい、首座さま!」

 …うーん。

いちいち『首座さま』と返されるのは、少々居心地が悪い。ボクは未だ、首座ではないのだが。

 訂正を促すべきか、またしても悩む。
篝はニコニコと、とても上機嫌だ。
この笑顔に水を差すのは憚られて…。

結局ボクは、状況に流されるがまま、静かに彼女と向き合った。

「それで…今夜は一体どういう用件で?」