一連の診察が終わると──。
祐介は、複雑に眉根を寄り合わせて言った。

「カズから聞いたよ。火邑の当主と、一戦交えたんだって?」

「うん…まあ。」

「医師としては、なるべく安静にしていて欲しかったんだけどね?」

「ぅ…ごめんなさい。」

 素直に謝ると、不意に祐介の口許が解(ホド)けた。

「帰るなり、カズに頼まれたんだ。あの後、キミが体調を崩していないかと心配していた。軽く診てやってくれってね。」

「一慶が、そんな事を?」

 祐介が頷く。

「そもそも、キミの宿酔いの責任は、ボクにある訳だし。主治医としては、今後も責任を持って体調管理をさせて貰うつもりだけれど?」

 主治医──か。
やはり、祐介は生粋の『医者』なのだ。
それも、かなり優秀な。

 恐らく。『癒者』としても、相当な腕前なのだろう。彼の言動には、実力に裏打ちされた揺るぎ無い自信を感じる。その矜持は眩しい程で、少し羨ましくもあった。

 片や。ボクの複雑な惟(オモ)いなど、知る由もない祐介は、不意に砕けた口調になって話を続ける。

「そうそう。あれから沙耶さんに会ってね。チクチクと嫌味を言われたよ。」

「沙耶さんは、なんて?」

「…『あら。未成年に飲酒を勧めるのは、違法だったんじゃないかしら?』ってね。」

 それらしく口真似をする祐介が可笑しくて、ボクは爆笑してしまった。

「祐介、面白い。」
「キミ程じゃないよ。」

 …どういう意味だ。
透かさず切り返された言葉に、思わずムッとしてしまう。すると──