「薙は、薙の道を選ぶさ。俺等がヤキモキしたって仕方ないだろ?」

「でもよ…」

「今は、嫡子審議会を待つしかない。一座の連中にも、お前からそう伝えてくれ。これ以上、浮き足立って騒ぎを大きくしたら、審議会にも影響を及ぼす。」

「…解ってるよ。糞っ!」

 烈火は苦々しく舌打ちをした。
そこまで期待されていたのなら、彼には悪い事をしたのかも知れない。

結局…。ボクが気持ちを決めない事には、何も始まらないのだ。次代の《四天》に選ばれたという一慶達にも、迷惑が掛かる。

 早く…結論を出さなくちゃいけない。
多くの人達の運命が掛かっている。

「まだ、答えは出せていないけれど。でも、ひとつだけ決めた事があるよ。」

 思い切ってそう言うと、一慶と烈火が同時にボクを見た。

「もう逃げるのは、止める。逃げても解決しないから。ちゃんと向き合って、必ず結論を出すよ。だから、少しだけ待って。」

 『そうか』と頷いて、一慶は微笑(ワラ)った。

今は未だそれしか言えないボクを、彼はちゃんと受け止めてくれる。それが、とても嬉しかった。

 烈火は、そんなボク等を不思議そうに見比べたが、やがて呆れた様に嘆息を洩らして、言った。

「ま、いいけどよ。甲本の揉め事に、首を突っ込むつもりはねぇし。」