氷見が退出するや否や。
烈火は、物凄い勢いで詰め寄って来た。

「どういう事だよ!決めてねぇって?」

──顔が近い。
声もデカくて、耳が痛い。
思わず片耳を押さえると、烈火は、ボクの手を掴んでグイと引き寄せた。

「ちゃんと聞けよ!お前…甲本を継ぐ為に、戻って来たんじゃないのか?!」

『戻って』──?

ボクは此処で生まれ育った訳じゃない。
だから、戻るという表現は間違っている。

 訂正を促すべきか悩んでいると、烈火は、また一際距離を詰めて覗き込んで来た。

「どうなんだよ、おい!?」

 あまりにも執拗に訊ねて来るので、ボクも仕方無く、これまでの経緯を説明する。

全てを知った烈火は、途端に脱力して溜め息を吐いた。それから、がぁーっと乱暴に頭を掻き毟る。

「…なんだよ、それは!? 六星どころか、自分の一族の事すら知らなかったって!」

「ゴメン。」

「いや、お前は別に悪くねぇだろ?伸之の野郎…巫山戯けやがって。一座の奴ら、変に盛り上がっちゃってんだぞ?どうすんだ、これ?!」

 『どうすんだ』と言われても、どう応えれば良いのやら、皆目見当が着かない。

 …すると。
一慶が、取り成す様に口を開いた。