「…そういや、お前。『手加減した』って言っていたよな?実際どの程度のウェイトで闘った??」

「ん~…40%くらい?」

 途端に烈火の口から、『ゲッ!』という下品な呻きが洩れる。

「あれで40?んじゃ、フルパワーで、どんだけなんだよ?? 化け物か、お前!?」

 ──ちょっと。
幾らなんでも、化け物は失礼だと思う。

 今度は、ボクが剥れる番だった。
だが、空気を読まない烈火には、此方の怒りが伝わらない。

 それどころか。やけに親しげな態度で、ボクの頭をポンポン叩くと、安心した様にこんな事を言い出した。

「兎に角だ。お前が首座になるんなら、一座も暫くは安泰だな。自分の身も護れねえようじゃ、首座は勤まらねぇ。こんだけ強けりゃ、合格だろう。次代は女だっていうから、どんなヘナチョコかと心配していたんだが…まぁ、取り敢えずホッとしたわ。これなら、代替わりも楽勝だな!」

「烈火…」
「あ?」

「褒めて貰って光栄なんだけれど──ボク未だ『当主になる』と決めた訳じゃないんだ。」

 そう言うと──。

烈火の細引きの眉が、付け根に向かってギュウゥと寄り合わさった。

「…何だって?」