「お前、誰に習った?」
「親父さん、だよな?」

 代わりに答えた一慶を見て、ボクは小さく頷いた。途端に、烈火が苦々しい顔になる。

「親父って…伸之?」

コクリと頷いてから、ボクは言葉を選んで話し始めた。

「三大明王拳は、中学時代にマスターした。菩薩拳と如来拳も教えて貰ったよ?」

 それを訊いた烈火は、束の間絶句した後、いきなり大きな声を上げた。

「狡りぃ!何だよ、伸之のヤツ──!? 俺が頼んだ時は、鼻先で嘲笑って教えてくれなかったくせによ!」

「素質の問題だろう?」

茶々を入れる一慶。

「…そういや。さっきのお前の攻撃も、酷いもんだったな。一発も当たっていなかった。」

「───っ!」

 烈火は、真っ赤な顔をして黙り込んだ。
そこへ、意地悪く笑いながら一慶が畳み掛ける。

「自分から粉掛けといて、逆に遣られてりゃ世話ねぇな、烈火?…まぁ、ここ暫く大きな討伐も無かったし。お前の拳も錆び付いてしまったのかもな。どうだ?俺で良けりゃ稽古付けてやっても良いぜ??」

「ふん。誰がお前なんかに!大金積まれても御免だね!!」

「まぁ、そりゃそうか。またコテンパンに熨(ノ)されちゃあ、お前の立場が無いもんな?火邑の面目も丸潰れだ。」

「煩ぇ!相変わらずムカつく野郎だ!!」

 独り剥(ムク)れる烈火を脇に置いて、一慶は、ふとボクを振り向いた。