「だーもう!! うぜぇんだよ、お前ら!俺に触るなっ!下がれ下がれっ!!」

『下がれ』と言われた護法達は、互いに顔を見合わせた後、物言いたげに一慶を振り仰いだ。どちらの命令を優先すべきか、迷っている。

 一慶は、『仕方が無いな』と言う様に小さく肩を竦めた。クイと顎をしゃくって、護法達を下がらせる。

ホッと安堵の表情を浮かべるや…。
烈火に一礼し、奥へと下がる護法達。

 気を遣われるのが苦手なのか…。
それとも単に、プライドが高いだけなのか。

烈火は自力で歩いて、中庭の縁台に座わろうとしていた。思わず差し延べたボクの手も、煩わしげに払われる。

「いらねぇって言ってんだろ!触るな!!」

「でも、痛そうだよ…?」

「唯の打撲だ。骨は折れてねぇ。こんなもん、怪我の内にも入らねぇよ。」

 …強がりを言って見せる烈火だけれど。
ビッコを引いてヒョコヒョコと歩く姿は、言葉以上に辛そうだ。

 ボクは、真摯な気持ちで深く頭を下げた。

「本当にごめんなさい。一応、手加減はしたつもりだったんだけど…。」

「手加減だぁ?!」
「うん。骨折しない程度に加減した。」

「あっははは!そりゃいいわ、傑作!!」

 一慶は、回廊の手摺りをバンバン叩いて大爆笑した。

…な、何が可笑しいのだろう?
チラと視線を移すと、烈火は右手に拳を握り、俯いたままブルブルと肩を震わせていた。

『畜生コイツら、舐めやがって!』…と、何やらぶつぶつと、呪いの言葉を呟いている。

 …心から謝罪したつもりだったが、却(カエ)って彼を怒らせてしまったようだ。何が、彼の気に障ったのだろう?言葉の選択を誤ったのか??

解らない。解らないけれど──

これは、そうとう怒っている。