「やりやがったな?」

 怨みがましく言い捨てると、男は再び襲い掛かってきた。

右手、左手、右足、左足…。

目まぐるしく繰り出される、スピードに乗った技の乱舞。跳躍と足技を組み合わせたリズミカルな動きは、敵ながら見事だ。

 だけど。
彼の攻撃のパターンは読めて来た。
よし──奇襲だ!

蹴り出された足を掴んで、グルリと回す。
すると、男の体は捻れる様に宙で一回転して、地面に叩き付けられた。

 ズザ──ッ!

一際派手に玉砂利が飛び散る。
撥ねた小石のひとつが、回廊の柱に当たり『コン!』と、乾いた音を立てた。

「て…めぇ!有りかよ、そんなの!?」
「セオリー通りじゃ勝てないんだろう?」
「ちっ!厭(イヤ)な奴だぜっ!!」

 男は、倒れた姿勢から弾みを付けて、またもヒョイと立ち上がった。

身が軽い。
それに力もある──でも。
決して、勝てない相手じゃない。