そんな事を訊いて来るという事は、どうやら、この屋敷の人ではなさそうだ。

部外者なら…遠慮する事はないか。

ボクは、鋭く射抜く男の眼光に負けじと、高く顎を聳やかして誰何(スイカ)した。

「そっちこそ、誰?」
「あぁ?」
「ボクは甲本薙。貴方は?」
「甲本…薙だぁ?」

「名前、教えたよ。そっちも名乗るのが礼儀でしょ?」

 赤い髪の男は、ニヤリと片側の口角を吊り上げた。

「甲本を名乗るって事は、あれか?お前が《金の星》の新しい当主か?」

「…だったら、どうする?」

 まだ当主になるとは決めていないけれど──
弱気な素振りを見せるのが嫌で、ボクは睨み返した。

「なんだよ…まだガキじゃねぇか。おう、お前!しょっぱなから、なに鼻息荒げてんだ?? 喧嘩売ってんのかよ?」

 挑戦的な視線を投げつけながら、男はゆっくり近付いて来る。玉砂利を踏む足音が、否応なしに緊迫感を高めた。

ジャリ…ジャリ……
ジャリ……

 そうして。
男は、目の前でピタリと足を止める。ボクより頭ひとつ半程も背が高い。その身長差で高圧的に見下ろしながら、男は言った。

「…ってことは、あれだ。お前が、次代の首座か?第五六一世・金剛首座さまかよ!」

言葉の最後は、拳と一緒に出てきた。
ボクは咄嗟にその手を取って、男の右脇下に潜り込む。そのまま体を捻って右肩に担ぎ上げると、男の体がフワリと浮いた。

宙で一回転して、下に落ちる。

 ズシャア────!

派手な音と共に、真っ白な玉砂利が四方に飛び散った。