「この様子じゃ、中も嘸(サゾ)かし豪華なんだろうな…。」

 誰にともなく、ボクは呟いた。

この古さと豪華さから察するに、中にはきっと国宝級のお宝が、わんさか飾られているに違いない。

…見たい。でも困ったな。
回廊には、やはり雨戸が立てられていて、中には到底入れそうにない。

中庭から建物の周囲を、グルりと廻ってみたけれど、猫の子一匹も潜り込め無い程、厳重に封鎖されていた。

 ──つまらない。折角ここまで来たのに。

 独りその場に立ち尽くしていると、建物の向こうから、此方に近付いて来る人影が見えた。

「…っんだよ。何処も開いてねぇじゃねぇかっ!つまんねぇな!!」

 ぶつぶつと呟きながら、玉砂利を派手に蹴散らしている。

…誰だろう?
如何にも柄の悪そうな若い男だ。

 赤く染めた短髪に、吊り上がった目。
高くて細い鼻梁と、大きめの口。
真ん中にスカルがプリントされた、真っ赤なTシャツを着ている。

ブラックジーンズに鋲打ちのベルト。
腰に下がった太いチェーンが、歩く度にチャラチャラと音を立てていた。

 それに、あの耳…!
ピアスが沢山付いている。
シルバーの──でも全部、形が違う。
お約束の安全ピンまで、当然の様にぶら下がっていた。