「ところで、薙。」
「ん?」
「…お風呂に入ったばかりなの?」

 小さく頷くと、遥はニッコリ笑って顔を近付けてきた。

「道理で良い香りがすると思った。」

 そう言って…ボクの首筋に鼻先を近付け、クンクンする。

「いいねぇ、石鹸の香り。女の子はこうでなくちゃ…」

 愉しげに顔を寄せてくる遥。
ボクは、どうしたら良いか解らない。
吐息が擽ったくて少し身を退くと、極近い所でピタリと目が合った。

──笑っている。
何?その意味深な眼差しは!?

「ねぇ、薙って彼氏とかいる?」
「いっ…いないよ、そんなの!」
「そう。それは良かった。」

「良かった?何が??」
「別に。こっちの話。」

 それきり…遥は満足そうにボクから離れた。機嫌良く鼻唄なんて歌い始める。

 一体何だったの、今の質問は?
ボクはキョトンとするばかりだ。