無言の迫力に、ともすれば怯みそうになる自分を鼓舞して、ボクは更に畳み掛ける。

「と…とにかく、助けて頂いた事は感謝しています。本当に有難うございました。お陰さまでスッカリ元気になりましたから、もうお引き取り頂いて結構です!!」

乱暴に頭を下げた途端、病室に沈黙が訪れた。

もう、本当に帰って欲しい。
これ以上は迷惑だ。
二人は複雑に目配せし合っている。

──ややあって、男が徐ろに口を開いた。

「…どうやら、手違いがあったようだな。」

「手違い?」

「あぁ。俺達は、お前を迎えに来たんだよ。なのに昨日…お前は、指定した場所に現れなかった。一体、今まで何処にいたんだ?」

「そ、それは…」

 まさか、一晩中迷子になっていたなんて言える筈がない。押し黙ってしまったボクを、彼は真っ直ぐに見据えていた。

 そうして改めて向き合うと、本当に背が高い。

身長180cmはあるだろうか?
手も足も長くて、モデルの様だ。
全身に程良く筋肉が付いているのが、服の上からも解る。

癖の無いサラサラの黒髪。
形の良い唇と、高い鼻梁。
アーモンド形の目が、綺麗な顔立ちを、より精悍に見せている。

 所謂る『美形』に属する容貌である事は、間違いないだろう。

きっと、女の子にもモテるに違いない。自分でも、ちょっとそう思っている風なのが鼻につく。