「待っていたって…何を?」
「勿論、キミを。」
「どうしてそこまで」

「キミが《神子》だからだよ。決まっているじゃないか。」

 此方が言い終わらない内に、彼は畳み掛けて来た。

「キミに逢えて、本当に嬉しかった。僕が仕える当主は可愛い女の子で──しかも《神子》だと言う。六星行者として、こんなに幸運な巡り合わせは無いよ。神子とは文字通り『神の子』だ。生まれながらに、比類なき力を備えている。僕は是非、キミに首座に就いて欲しいと思っているよ。」

 祐介は、ボクが首座になると、確信している様だった。

何を根拠にそう思うのか、ボクには解らない。もしかしたら、何かしらの思惑があるのかも知れない。

 月に群雲が掛かる様に…ボクの未来にも、みるみる暗雲が立ち込めた。

彼等の熱意にほだされて、このままズルズルと当主に祀り上げられちゃあ堪らない。

流されない様に気を付けなければ…。

「他に質問は?」
「え?」

「まだ何か釈然としないって顔をしているね。僕で解る事なら、何でも答えるよ?」

「それ…さっき、一慶にも言われた。」
「カズが?へぇ…」

 …また、だ。
ボクが一慶の名を出した途端、祐介の表情が、また少し鼻白んだ様に見えた。

何やら奇妙な感覚に捉われて、ボクはふと尋ねてみる。