月が見える。
その下に、虹色を帯びた淡い雲。
明るい星がひとつ、二つ…そして。
降り注ぐ月光を受けて、鑓水(ヤリミズ)がサラサラと流れていた。

他には、何も見えない。
漆黒の闇ばかりだ。

「…月が、何か??」

 意図する處ろが解らず問い掛けるボクに、祐介は只、首を横に振る。そうして、小さく手招きをした。

 ──何だろう?
訳も解らぬらまま、丸窓に近付くと…

「外を良く見ていて。」

 耳元に囁きながら、祐介がフッと明かりを消した。真の闇が訪れた…その刹那。無数の淡い光の粒が、ゆらゆらと宙に浮いているのが見えた。

 綿毛にも似た白い光──これは…

「蛍?」
「蛍に見えるかい?」
「違うの??」
「…もっと良く見て。」