何やら、どんどん腹が立ってきた。

路上で倒れたボクを抱えてくれたのは、恐らく彼なのだろう。心が読めなくても、それ位は解る──だが。

赤の他人の入院手続きまで行うとは、少しばかり行き過ぎではないのか?

どうも変だ。

何か、裏がある。

もしかして彼等は、身元不明者をターゲットにした、臓器売買のシンジケートか?

 何しろ、二人とも言動が怪しい。

魂が見えたり、他人の考えが解ったりするなどと言われても、到底信じられる筈がない。

嘘を吐いているのか、真実なのか、直ぐには判別が付かないが…何れにせよ、まともな人間だとは思えない。

「──何か変だわ。」

 不意に、女の子が首を傾げて訊ねた。

「あなた何者?どうして何も知らないの??」

「何もって、何を?」

「何もかも全部よ。あなたの魂魄は、まるで新品のノートみたいに真っさらだわ。行を積んだ形跡が無い。あなた本当に、『本物の』ナギなの?」

「ほ、本物だよ!!失礼だな!さっきから可笑しな事ばかり言って…そっちこそ一体、何者なんだ??」

「────。」

 男が、スウッと双眸を眇める。

それだけで、室内の温度が2~3℃程下がった気がした。