霊とは、神とは、一体何なのか？

アニメやゲームじゃあるまいし。そんなモノが、人の世を気楽にウロチョロしていて良いのか？ボクには何も見えないし──勿論、声も聞こえない。

「うーん…そうだなぁ。」

　眉間に縦皺を寄せながら、一慶は暫し逡巡した。

「そんなに難しい話？」

「簡単ではないかもな。…例えば《結界》ってのは元々、仏が降臨する《場》を浄める事を云うんだ。邪霊や雑多な霊の侵入を防ぐ、霊的なバリアだと言えば解るか？規模にも依るが…時には、人間や生物の侵入も防いでしまう事がある。行者が術を使う際、絶対に欠かせない防御法だ。」

　…成程。祐介が《癒霊術》を行っている間、誰も診察室に入って来なかったのは、そうした理由からなのだ。

　妙に納得していると、一慶は不意に話を終わらせようとした。

「これ以上は、お預けだ。話をすれば長くなる。その先は、お前が当主になったら追々教えてやるよ。」

「え？どうして今じゃ駄目なの？」

「霊と一口に言っても、複雑な区別の仕方があるんだ。お前がその気になったのなら、全て実地で教えてやる。『目に見えない存在』を、頭で理解させるなんて、そもそも無理な話なんだよ。実際に『見せて』教えた方が早い。」

「うん…」