「そんな人が、ボクに式神を…?」

 それは怖い。かなり怖いぞ。

幾ら跡継ぎの実力を見極める為とは云え、何故こうもボクに固執するのだろう? たかが一人の小娘に…

 ふるりと身を震わせたところで、一慶が再び話を続けた。

「そもそも《式神》とは、陰陽師が使役する傀儡(クグツ)なんだ。対して、僧侶が使役するものは、眷属(ケンゾク)と呼ぶ。中身は似た様なものなんだがな。」

「ぉ、陰陽師!?」

「そうだ。鍵島家は、僧侶でもあり、陰陽師でもある家柄なんだよ。詳しくは、遥に訊くと良い。」

「??──うん。」

「一座の中でも、鍵爺は特異な存在だ。高位の僧侶でありながら式神を遣うので、《式神遣い》とも呼ばれている。式神は、眷属と違って、自由に形を造り変える事が出来るんだが…奴の式は、別格だな。何しろ予想外の形態で、信じ難い動きをする。屋敷内の結界も、簡単に破って侵入して来る程だ。」

「そんなに!?」

「そんなに。だから邸内では、滅多な事が話せない。この部屋には親父が毎日、二重三重に結界を張り直しているから大丈夫だと思うが…。」

 成程。さっきから歯切れが悪かったのは、その所為(セイ)か…。