「昨日…病室で、お前が俺に飛び掛って来た時から、ずっと考えていたんだ。あの反応の速さ…。その後の絞め技も、明らかに訓練されたものだった。親父に喰らわした当て身にしても、そう。何気無い風をして、咄嗟に拳圧をコントロールしている。──お前、かなりの使い手だな?」

「そ、そんな事ないよ。」

「謙遜しなくていい。今ので充分伝わった。首座直伝だもんな、出来て当然だ。」

 そう言って眩しそうに笑って見せると、一慶は少しだけ真顔になった。

「今の…《北天》の形だったな。」
「うん。」

「他にも色々習っただろう?四天体術には、基本の形だけでも四つはある…南天、東天、西天…」

 ──そうだ。

この護身術には、東西南北に準えた四つの基本形があり、それを組み合わせる事で攻守を使い分ける。それをボクは、物心ついた時から親父に教わっていた。

《六星体術》という正式名称は知らなくても、奥義と呼ばれる技の幾つかは、既に身に付けている。