どうしたのだろう?様子がおかしい。

「一慶…?」

近付こうとした瞬間。
一慶は捻った肩に手を添えて、大きくグルリと回転させた。

「───!!」

声を殺して一瞬の激痛を堪える。
その姿を見て、ボクは漸く気が付いた。
一慶は、肩を脱臼していたのだ。

(どうしよう!)

思わず手を延べたら、片手を挙げて止められた。

「だ、大丈夫…?」
「平気だ。慣れてる。」

一慶は、ボクに向かって無理に笑って見せた。

「やるな、お前。流石は首座直伝。」
「ごめん…。つい、反射的に…」

「いや。今ので良いんだよ。反応が速くて驚いたが、その位じゃないとな。」

 何故か満足そうに、一慶は笑った。
あまりにも彼が平然としているので、ボクは、却って不安になる。

「本当に大丈夫?ボク今、かなり本気で」

「そりゃ痛ぇよ。六星体術の本気モードで締められたからな。」

そんな事を言って笑っているけれど──。
咄嗟に力加減が出来なかったから、相当効いている筈だ。のし掛かった弾みで、手首を捻挫しているかも知れない。

無理に笑わなくてもいいのに…。
そうやって、ボクに気を遣っている。

「大丈夫だって。そんな顔するな。」
「でも…」