「お前、六星体術を習っただろう?」

 出し抜けに訊ねられて、ボクは咄嗟に怒りを忘れた。

「六星…たいじゅつ?確かに、武道なら習っていたけれど──親父は、護身術の一種だって言っていたよ??」

「あぁ、やっぱりな…。そういう事だけは、ちゃんと教えているんだ。伸さんらしいな。」

「一慶…?」

 小首を傾げて見詰め返す──と、突然。
一慶がボクに向かって、鋭く拳を突き出してきた。

「───っ!?」

シュッ!と空を切る音がする。
その瞬間、体が勝手に反応した。
右の手刀で一慶の拳を叩き落とし、空いた左手で彼の腕を取って、大きく外側に捻り返す。

直ぐ様、体(タイ)を反(カエ)して片足立ちになり、捻り上げた腕目掛けて体重を預けた。

──刹那。
グリュッ!と、畳の上で鈍い音が聞こえた。

「痛って──!わかった!ギブギブ!!」

悲痛な叫び声で、ハッと我に返る。
組み敷かれた一慶は、自由になっている片方の手で、ボクの膝をパタパタとタップしていた。

「あ、ゴメン!!」

 慌てて、締め付けた腕を解く。
ふぅ…と大きな溜め息と共に、一慶がゆるゆると体を起こした。

「凄ぇな…久し振りに技掛けられた。」

苦痛に片頬を歪めている。
チラリと見えた額には、大粒の汗が滲んでいた。