殆ど条件反射に近い反応だった。
おっちゃんはガクリと力尽きる。

「お、親父──っ!?」

気を失ったおっちゃんを見て、一慶は蒼褪めたが…ボクとしては、大変に好都合だ。これで漸く話を続けられる。

「ねぇ、さっきの答えは?」
「え?」

「心当たりがあるんだね?」
「まぁ…ある様な無い様な…」
「どっち!?」
「どっちって、お前…」

 どうにも歯切れが悪い一慶。
やはり何か知っているのだ。
誤魔化した處ろで、ボクには解る。

「ねぇ、知っているなら教えて!それとも、ボクには知る権利すら無いの!?」

 上目遣いにそう言い放つと、彼は少し困った様に片側の眉を歪めて答えた。

「《式》を遣えるのは、六星の中でも極々限られた人間だけなんだ。だが…いろいろ問題があって、此処では言えない。」

「問題って?」
「いや──だから今は、ちょっと…」

 一慶は巧みに、ボクの質問をはぐらかそうとする。奥歯に物が挟まった様なその態度に、益々不信感が募った。──怪しい。とても怪しい。

「誰なの?」

逸らそうとする眼差しを捉えて、強く見詰め返す。すると彼は、観念した様に大きく溜め息を吐いて言った。

「鍵島の爺さんだよ。」
「かぎしま…って?」
「薙。」