……重い。
重いよ、おっちゃん…

酔って脱力している所為で、大きな身体は、ピクリとも動かない。無駄に汗が噴き出るだけだ。

「薙、ちょっと退いてろ。」
「?…うん。」

 言われた通りに脇へ避けると、一慶は、ウォーミングアップする様にグルリと肩を回した。両手でおっちゃんの右腕を取り、スイと懐に体を潜らせ、半身を起こす弾みで一気に持ち上げる。

 ──ふわり。

巨漢のおっちゃんが、軽々と起き上がって、一慶の肩に担がれた。

これは凄い…
見事な担ぎ技だ。

 思わず感心していると──

「行くぞ、薙。」

小さく囁いて、一慶が目配せした。
ボクは慌てて立ち上がり、ぶら下がっているおっちゃんの左腕を肩に担ぐ。

 そうして、盛り上がる皆に気付かれない様、そっと広間を後にした。