かなり呑んでいるみたいだけれど、全然酔っていない。普段の彼と、そう変わらない様に見える。

「祐介はワイン派なの?」
「別に。その時の気分かな?」
「ふうん…。」

「薙は?」
「え!?」
「本当は結構いける口なんだろ?」
「──!」

ドキリとした。
どうして解ったのだろう。
例の『天解の術』とやらで、またもや見透かされたのだろうか…?

 実を云うと、ボクは飲酒経験が長い。
中学生の頃。近所の造り酒屋に手伝いに行って以来、そこの杜司に気に入られ、酒の『いろは』を教えて貰った。

だから、ボクは日本酒派なのだ。
濁酒《どぶろく》だっていける。だけど…
もしそれが沙耶さんにバレたら、大変な事になるだろう。それが恐ろしくて、返答が出来ない。

 すると祐介は、不意に声を顰めて…

「大丈夫。皆には秘密にして措くよ。それで、キミは何が好きなの?」

「日本酒、かな。」
「へぇ…沙耶さん好みだね。」
「…うん。」

 ──言われて。ふと視線を巡らせると、沙耶さんと苺が、睨み合ったまま呑み競べをしていた。

「…ねえ、祐介。」
「なに?」
「内緒にしてくれる?…その…」

「キミが呑めるって事?勿論、約束するよ。二人だけの秘密だ。」

何処か艶っぽい表現が気になったけれど…祐介は、にこやかに請け負ってくれた。

取り敢えず良かった…
このまま一生、呑めない振りをしよう。