「まぁまぁ、母上。各々好みってもんがあるんだからさ。怒らない怒らない。」

 宥める遥は、流石に扱い馴れている。

頻りに憤慨する彼女の盃を、大きなグラスに取り換えると、そこになみなみと酒を注いだ。それを一気に呑み干した沙耶さんは、空のグラスをタン!と勢い良くテーブルに置いて言う。

「ふん!何が好みよ、生意気なガキ共め!!呑めりゃ何でも構わないクセに!」

怖い…!
沙耶さんは酒癖が悪いのか、覚えておこう。

 見れば、おっちゃんは完全にグロッキーらしく、一升瓶を抱えたまま、ゴロリと仰向けに寝転んでいた。上座は既に満員御礼で、ボクの座る場所が無くなっている。

あ~もう…何が何だか…

 空いた席を探してウロウロしていると、祐介が小さく微笑って手招きをした。

…良かった。隣が空いている。
遥の席だけど、遠慮なく座っちゃおう。
ペタリと膝を着くや、祐介は空かさず声を掛けて来た。

「お疲れ。」
「うん、疲れた。いつもこうなの?」

「まぁね。沙耶さんは、あの通り酒に呑まれるタイプだし。孝之さんも、大概あんな風だよ。」

「そういう事は先に言って欲しかった…」

 ボソリと呟くと、祐介はクスクス笑った。