「ねぇ、もう良いんじゃない?俺、腹減って死にそう!今夜は親睦を深める為の席なんだからさ。ぱぁっとやろうよ、ね!?」

 突然、脳天気な声がして緊張が弛んだ。

「遥さん…??」

「遥でいいよ。初めましてだね。俺も呼び捨てにしちゃっていいかな??仲良くしようね、薙?」

「うん…よろしく…」

 ボクの返事は半ば虚ろだったけれど、遥はニコリと笑って安心させてくれた。──いい人だ。

「さあ、飯にしようぜ!どうやら腹が減ってんのは、遥だけじゃねぇみたいだしな。」

 おっちゃんが、珍しく気を利かせる。
すると空かさず、苺が賛同の声を挙げた。

「そうよぉ。苺、お腹が空くとイライラしちゃうんだから~!」

「あぁ、悪かったな苺。直ぐに準備して貰うからな。お~い飯だ!酒くれ、酒~!!」

 おっちゃんが命じると、お手伝いさん達がビールや酒を持って、慌ただしく入って来た。急に、座が賑やかになる。

 やがて乾杯の一声が上がり──。
まるで何事も無かったかの様に、会食が始まった。