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高校生

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─── 15歳 春 ───

俺たちは、無事、志望校に合格した。

長い春休み。

俺は、受験の疲れもあり、朝10時まで寝ていた。

寝ぼけた顔にボサボサの頭で、パジャマのまま1階に下りると、ダイニングで母とまったりお茶を飲む奏と目が合った。

「ゆうくん、おはよ。」

奏がくすくす笑う。

「………おはよ。」

言ってから、気づいた。
俺、今、めっちゃカッコ悪くない?

慌てて洗面所に駆け込み、顔を洗って、寝癖を直した。

その後、もう一度、2階に駆け上がり、着替えて下りてくる。


もう、しばらく、奏には会えないと思っていたのに、なぜか奏は俺ん家にいる。


なぜだ?


「何で、奏がうちにいるの?」

奏のくすくすが止まらない。

「私が誘ったに決まってるじゃない。
奏ちゃん、宿題がいっぱい出た上に、高校で
習う単元も教科書見てやって来いって
言われたんだって。
昨日、翔子ちゃんが電話で言ってたから、
優音に聞けば?って誘ったの。」

翔子ちゃんっていうのは、奏のお母さんだ。



「だったら、何で、昨日のうちに俺に
言わないんだよ。」

「言ったら、優音、奏ちゃんが来る前に
起きちゃうでしょ?」

「当たり前だろ!?」

「そしたら、奏ちゃん、優音に取られちゃう
じゃない。
私は、奏ちゃんとお茶したかったの。」


はぁぁぁぁ………
いつも思うんだけど、この人、何考えてんだ!?

「とりあえず、お茶が終わるまで、
朝ご飯でも食べれば?」

俺は、そう言って差し出されたサンドイッチを黙々と食べた。


奏が困ってた宿題は、俺がもう塾で習った所だったから、すぐに教えられた。

「奏。
高校、行っても、いつでもうち来て
いいからな。
勉強なら、いつでも教えるから。」

「うん。頼りにしてる。」


これで、高校が違っても、奏に会える。

俺、勉強がんばってきて、よかったぁ。


─── 15歳 夏 ───

今年も河合が花火に誘ってきた。

奏も参加なのを確認して、参加で返信をする。

奏は、今年も浴衣かな?

淡い期待を抱いて、待ち合わせ場所に行く。

浴衣だ!

浴衣姿の奏は、破壊力抜群だ。

俺は理性を失って、手を繋ぎたい衝動に駆られる。

だけど、いつも奏は、女子の中心にいて、俺の手は届かない。

残念…

結局、この年も、浴衣姿の奏を眺めるだけで、終わってしまった。


結局、奏とは、年に数回、みんなと一緒に出かける位で、全然話もできないまま、高校を卒業した。

勉強を見てやる約束はしたが、奏から連絡が来る事は、なかった。

だけど、みんなで出かけた時には、必ず誰かが奏に恋人ができたかどうかの探りを入れるので、奏が誰とも付き合っていないらしい事が分かった。



ただ、奏の誕生日だけは、プレゼントを届けた。

1年の時はバッグ。
2年の時は腕時計。

もう子供じゃない…と少し背伸びしたプレゼント。

3年の時は、受験真っ只中だったけど、バイオリンのブローチを贈った。

4年間離れても、俺を忘れて欲しくなくて、俺の代わりに奏を守って欲しくて、バイオリンにした。



4年間、奏に悪い虫がつきませんように。