最近、お姉ちゃんの様子がおかしい。
放課後、美織はそんなことを考えながら駅に向かっていると、途中のコンビニの前にたむろっている附学の男子が目に留まった。

不良は嫌いだ。
自分が一番って顔をして、周りの迷惑なんて考えない。
実際、ここの学校の生徒が喧嘩をしている場面を目撃したことがあるけど目障りだし、怖かった。
附学はそんな生徒ばかりだと聞いているし、あれはほんの一部に過ぎないわけではないだろう。

お姉ちゃんと一緒にいた彼もきっとろくなものではない。

それなのに、お姉ちゃんはどうしてあんな男の人といたのだろう。宏くんのほうがよっぽどかっこいいと思うのに。

そう比べてしまったのは、彼とメールのやりとりをしている内になんとなくだが、柚月のことを好きなような気がしていたからだ。
出来るなら宏くんの思いが実ればいいのに――。

しかし美織なりに柚月があの人と仲良くする理由に心当たりはあった。
もしかしたら好きとかではなく、お姉ちゃんはあの人に近づいて知りたいだけではないのだろうか。

そんな気がしてならなかったのは、不良高校に通う男の子は柚月の好みのタイプではなさそうに見えたこともある。

それに、美織が想像するようなことを柚月も思っているとしたなら、心臓の持ち主の記憶が柚月の中に残っていると自覚しているとしたら、もしかしたら――。

そこで、考えすぎかと我に返ると、駅前にいた男子が目についた。

お姉ちゃんと一緒にいた人だとすぐに気がつくけど向こうは美織には気が付いていない様子で携帯を操作している。
近づき、
「あの」
美織が声をかけると誰かわからないようで表情を変えず見据える。
「羽野柚月の妹です」と告げると、ようやくああと目を丸くして笑った。