結局、鍵と交換条件にハローくんが送ることになったけど、柚月は内心迷惑に思われていないか気になり、素直に喜べないでいた。
大通りを並んで歩きながら
「あ、あの……ごめんね。遠回りさせて」
「ん? ううん、いいよ。送るのはなんとも思ってないけど」
「けど?」
「……」

柚月というより母親の態度が気に食わないといった様子だった。
初めて見るハローくんの顔がおかしくてぶっと柚月は噴き出してしまう。

「あ、なんで噴き出すの?」
「なんかさっきのハローくん、むっつりしてて別人だったから。なんかおかしくて」
「ゆづちゃんだって、親の前と友達の前違うでしょ?」
「うん。でもあんなに差は激しくないかな」
「……うるせーんだもん。あいつ」
うざったそうに呟く。

「というか、気づいてたの?」
「気づいてたって?」
「私がハローくんのお母さんのお店から花を買ってたってこと。お花あげたとき何も言わなかったけど」
「うん。袋でわかったけど。だって説明することでもないし」
「……そうかもしれないけど。びっくりしたなぁ。私、ハローくんにハローくんのお母さんが作ったものあげちゃったんだ」

少し落胆している柚月の様子がおかしくて、はははとハローくんは声に出して笑うけど、
ずっと心のどこかでからかわれていた感じがして面白くない。

「でも優しい感じがして素敵だったでしょ。
きっと日常もあんな風にハローくんを見てるんだよ。もっと感謝しないと」
と、以前保奈美さんが息子に感謝してほしいわとぼやいていたことを思い出し、代弁して言い返した。

きっと言われていい気持ちがしないはずというのは、さっきの様子から想像はついた。