柚月はたまに、初めて来たはずなのにこの場所を以前から知っているような懐かしい感覚がするときがある。

そこで何をしたか残像のような記憶として残っていたりする場合もあるし、ただ漠然と懐かしさを感じるだけのときもある。

今朝見た夢もそうで、漠然とした懐かしさだけを感じた出来事だった。

だけど人に対して、知っている、懐かしいという感覚があるというのは初めてだった。

また会えたことに驚きと喜びが混ざる。

この感覚の答えを知りたいという思いが湧いてきたが、きっと声をかけても柚月のことは知らないと言われ、怪訝な顔をされて終わるだけだろう。

今までずっとそうだった。
ここに来たことがあると言うと来てないと言われてきた。

気のせいかもしれないと言い聞かせながらも彼から目を離せなかった。

やっぱり声をかけてみたいな。
そう意識が向くと胸が高鳴るのがわかって目を逸らした。

アナウンスが流れ、美織が降りる電車が駅で停車する。