ただの友達と柚月は言い切りながらも心のどこかでただの友達とは思っていなかった。

というのも、彼と出会ったのは小学五年生の終わり頃で、柚月が入院した病院に彼の弟も入院していた。お見舞いに来ていた須長くんとはそんな縁で知り合いになった。

中学生のとき彼の弟が亡くなってから、連絡をとっていなかった柚月は高校で再会して驚いた。

柚月は彼が弟のことを大事に思っていたのはお見舞いに来る二人の仲睦まじい様子を見て知っていたし、その死を今はどう受け止めているのかはわからない。

なんとなくだが、二人で彼の弟の話をしている瞬間、彼の弟も近くにいてくれるような気になる。
だから彼もそうだといいなと思っている。

たまに二人で放課後遊ぶことがあるが、それを話したくて集まるというわけでもないのに、二人でいると自然にそうなる。

そういうことはやっぱり彼の弟の話をしたいという気持ちがお互いの中にあるのだと柚月は認識している。

闘病中の柚月の辛い時期を知っていて、柚月も彼の辛い時期を知っている。

同士とは言えないし、そこまで支え合ってきたと言えるくらい親友というわけではない。ただその辛い時期を知っているだけで二人の間には見えないけど強い絆のようなものがあるような気がしていた。