「うん」
「考えたんだけど、私、やっぱり宏くんとは友達でいたい」
「……」
「ごめんなさい」
「……うん。そんな気がしてた。そんなにあいつがいいの」
「うん」
そっかーと言うと気が抜けたように笑った。
嫌な顔をさせてしまうだろうと構えていたものだから、柚月も拍子抜けする。
むしろ告白する前の自然な彼の表情にも見えて、安心感も抱いた。
結局ずっとお互い気を張っていて、どこかぎこちなかった。
「実は考えてって言ったくせに、ここ数日落ち着かなかった。自信なかったから。考えてくれてありがと」
「ううん。こっちこそ、ありがとう」
「じゃあこれからは友達でって……そう簡単にいかないと思うけど」
と足元を眺めるので、柚月が暗くなり返事を出来ないでいると顔を上げ
「あ、嘘。そんな顔するなら簡単に友達に戻る」
「本当に?」
しっかり頷いた。
「宏くんは強いね」
「どこが?」
「私なら出来ないなって思う事沢山あるよ。自分で言うのも変だけど、好きな人と友達になるの出来ない気もするし」
「まあ色々乗り越えてきたから」
と茶化したように胸を張る。
だけど、彼の本音のようにも聞こえてきたのは瑞樹くんのことがあったからだ。
柚月とは違って、彼は亡くなっている。
自分なら、例えば美織が亡くなってしまったなら、立ち直れているのだろうか。