確かに可愛いも犬も嬉しくない言葉かもしれないと反省し、

「あ、ごめんなさい」
「ていうか、あいつらありえないよね。絡まれるの嫌だったから、交番からよく見えるところに座ってたのに、喧嘩ふっかけてくるとかさ。
あんなとこでもめたらサツが介入してくるってくらいわかれよ」
「え、気づいてたんですか? 絡まれるって」
「うん。電車乗ってたら、あいつら近づいてきたから、途中で降りたんだよ」
「え? そんなところから追われてたんですか? 何があったんですか? 普通、あんなの投げられないですよ」
「うーん。わかんない。趣味じゃないの。的当てみたいな」
「趣味って。あんなの当たったら怪我しちゃいますよ」
「怪我してほしかったんじゃない」
「怪我していい人なんていないです」

柚月が強い口調で言い切ると、彼は目を丸くした。

「まああれだね。実は俺、すごい嫌われてるんだよね。だから色んな奴に目をつけられて大変なんだ」

朗々と言うから冗談か本気かわからず柚月は返答できなかった。

だけど初めて見た日の悲しい顔が浮かび、本当のことのように感じてくる。本当はとても悲しいのではないか。
そんな気がして、咄嗟に柚月は「あげる」と持っていた紙袋を手渡した。