「独り言?」
「うん。なんか巻き込んじゃったみたいでごめんね」
「……」

突然、瓶が飛んできてパニックになったとはいえ、恥ずかしい間違いだと柚月は頬を赤くした。

「ちょっと休んでこうか。俺すげー喉乾いたー。自販機ないかな」
「あ、向こうにありますよ」
「なんか飲む?」
「飲み物持ってます」

彼が風にあたりたいというから海沿いにあるベンチに腰をかけた。日が傾きかけていて、レインボーブリッジやビル群が黒く染まっていく。

「にしても酒かよ」と彼はサイドの髪を鼻に近づけ顔をしかめた。

少し濡れていたのは汗だけではなく、さっき投げられた瓶のせいもあるようだった。そこでさっき庇ってくれたことを思い出し、

「すみません。私のせいで。拭くのハンカチくらいしかないんですけど」
と慌てて差し出す。

「汚れちゃうよ」
「洗えば大丈夫ですから」と言うと「じゃあ遠慮なく」と受け取った。

ハンカチを広げると、本当に遠慮なくお風呂上りに髪の毛を拭くようにわしわしこする。柚月は犬みたいに見えて微笑ましくなった。
その視線に気が付いて

「何?」
「あ、いや。犬みたいで可愛いなって思って」
「え、犬? 犬?」と目をぱちくりする。