手際よく作業を終えると、ピンクをベースとした小ぶりのブーケを見せた。
「どう?」
「すごく可愛い」
「そう言ってくれて嬉しい」
「いつもありがとうございます」
柚月がここに通うのはバイト先から近いからだけでなくて、初めてこの店に入ったとき保奈美さんが作ったブーケがまるで神聖な森から抜け出してきたかのような、そんな佇まいを見せていたからだ。
お花のことはよくわからないけど、花本来の美しさを引き出せる人のような気がして、それから通うようになった。
紙袋にブーケを入れてくれたけど、可愛らしくて何度か取り出してみたくなる衝動にかられた。
ウキウキした気持ちでいると、駅前のベンチに見覚えのある白い学ランの男の子が座っていた。
また心臓がドキンと高鳴った。
あの彼だ。
まさかこんなところでまた会えるなんて思いもしなかった。