「柚月ちゃんは、どっちが本当のハローくんだと思うのかの?」
「え?」

それは考えなくてもわかる。一緒にいるとき、ふわりと感じる心地良い空気や自分の中から光が溢れ出すような喜び。それを一緒に体現できる。それが本当のハローくんだとわかっている。

「優しいハローくんです」
「じゃあ伝えたら。柚月ちゃんだってわかってるんだもん。本当にわかってる人が伝えるべきなんだよ。あたしのすることじゃないから。伝えてあげて」
「でも、私なんかが言っても」
「……そうだね。そんな自信のない人が言っても仕方ないかもしれないね」
はっきり言われて、柚月の気持ちはさらに沈む。
けど、と続けた。

「あのね、文化祭で最初に中庭にいる2人を見かけたんだけど、そのときハローくんの頭の中の傷の話を思い出したの。
それでね、ああもうそんな傷ハローくんにはないんじゃないのかなって感じた。
ハローくんに彼女って伝えられて疑問を持たなかったのは、そんな空気が2人の中にあったからだよ。
そのときの柚月ちゃんなら、ちゃんと伝わると思う。伝えようとしなくても」
と朝芽先輩は柚月を見つめながら真剣に伝えた。