「あたしは、ハローくんは、自信がないから周りを傷つける人だと思ってたな。
自分のこと信じられないから虚勢をはって守る、そういうところがあるんじゃないかって思ってた」
「虚勢?」
「うん。自分のことを信じないっていうのは、自分は愛されてないってことを信じてるってことで、本音は裏切りや嫌われたりするのが怖いからだと思うんだ。
愛を感じたことのある人はそんなことしなくても、守ってもらえるって自然に信じているから。
誰も信じないとか友達なんかいらないとかそんなこと言わないもん。
だから一人が平気って虚勢をはる。
強さで自分を守ろうとしてる。
だから喧嘩してたのかなって思ってる」

頷いて、柚月は
「そんな風に自分が愛されてないって信じてるっていうのは、虐められてたとか関係あるのかな」
と自分が考えていたことを口にした。

朝芽先輩は虐められていたことも知っていたようで驚かなかった。

「……頭の中のハート」
と彼女は呟いた。

「頭の中のハート?」
「その話、知らない?」
「知らないです」
「ハローくんが言ってたんだけど、虐められた人って脳に傷ができるんだって、その傷がハートの形をしてるの。
だからハローくん、ハートがふたつあるって言ってた。
二個もいらないのにって」

ハートと言われて、自分の心臓を連想する。柚月には借り物のハートしかなくて、彼には本物と偽物があるみたい。チグハグでなんだかおかしい。