柚月はどういうことだろうと考え直して……ああ、あのとき耳打ちして伝えた好きな子とはそんな嘘なのかと気がついた。
柚月を好きな子ではなく、彼女と紹介して安心させたんだ。
彼の嘘を水の泡にさせてしまった。
今更、彼女だなんて言い直しても信じてもらえないだろう。
「ごめんなさい。私、嘘を吐き損ねちゃいました。彼女っていうのはきっと、ハローくんの嘘なんです。朝芽先輩が自分のこと怖がってるから、それで安心させたくて私のこと嘘で彼女って言ったんだと思います。でも、私は、彼のことが好きです」
そう伝えると朝芽先輩は、ひだまりみたいに笑ってみせた。
柚月はハローくんが以前、彼女から天使を感じたといったことを思い出した。
面識があってもなくてもたぶんこうして自然と人を助けるような人なんだろう。
惹かれるのも自然なことのように感じた。
同時に自分と比べて悲しくなった。
彼に拒絶されたことがそう思わせた。
「朝芽先輩、ハローくんってなんで喧嘩するんですか」
柚月はうわごとのように呟いていた。
朝芽先輩が驚くと同時に柚月も我に返る。
「あ、すみません」
「ううん。そんなこと訊くなんて何かあったのかの?」
「ハローくんが喧嘩しているの止めようとしたら、余計なことだったみたいで、怒らせたというか。それで今、少し気まずいんです」
「そっか。好きなら、それは辛いね。喧嘩をする理由……」
みぞおちに視線を下ろす。