こくりと頷くと
「大丈夫? 痛い?」
「痛くないです。大丈夫です」
「ティッシュと、あ、そこに水道あるから手を洗おう」
言われるがまま彼女に着いて行き、ぼんやりと傷口を流れる水を眺めていると、さっき朝芽先輩が言いかけた言葉の意味が柚月に伝わった。ハローくんの彼女だと誤解している。
「先輩、私、ハローくんの彼女じゃないです」
「え?」
「さっきそう言いかけてたので。彼女じゃありません。それと……やっぱりすごく痛いです」
白状すると、また涙が溢れそうになった。
「そっか」
頷いただけなのに、全てを受け止めたような落ち着きがあった。
彼女が鞄からバンソウコウを取り出し、傷口に貼る。
柚月は冷静になり「すみません。取り乱して」とバツ悪く謝る。
「ううん。こっちこそ、ごめんね。変なこと言って。文化祭のとき、ハローくんから彼女って紹介されたもんだから、てっきりそう思ってた。聞き間違いだったのかな」
「はい、付き合ってないです」