放課後、昇降口を出た。
なんだか少し身体がダルい気がする。そういえば最近、足の浮腫みも酷いようだ。

落ち込んだ気分も手伝って俯いたまま歩いていると、花壇の脇に停めてあった自転車に気づかずに身体をぶつけてしまった。
勢い良く傾いた自転車を咄嗟に手で止めたのはいいものの、カゴで手の平を切ってしまった。

「いたっ」

その傷がハローくんの手の甲の傷と重なって見えて、段々視界がじんわりと滲んで見えなくなる。
小さい頃の虐めがなかったら、彼は今、こんな風に自分を含め誰かを傷つけることもなかったのかもしれない。
須長くんの話を聞いて、柚月なりに考えた彼が喧嘩をする理由を思い浮かべて、また悲しくなる。

「あーちゃん、大変だ! 怪我をして泣いてる子がいるよ」

その声にハッとして我に返ると、傷口から血が流れていた。

「大丈夫?」と駆け寄って来たのはハローくんの片思いの相手の朝芽先輩だった。
隣に双子の兄である京先輩が立っていて心配そうにこっちを見ていた。

朝芽先輩は「あれ、ハローくんのかの……」と言いかけて口を閉ざした。いけないことを言ってしまったというように言い直す。

「あ、んと、この前会ったよね。ハローくんと一緒にいた」

「ハローって、あーちゃん、あのハロー?」と京先輩が口を挟むと「京は黙るのじゃ」と独特な口調で制す。
不服そうな顔をする。