「先週から始まったって
言ってたけどターゲットは誰だったの?」

「俺です」

その言葉で何となくわかったみたいだ。

「もしかして、先週
毎時間来てたのは
クラスメイトから逃げるためだったの?」

察しがいいな。

「はい。
先週は本当に疲れました」

「それで?」

結果が気になるのか。

「俺が勝ちましたよ。
そんで、今週っていうか
今日の放課後からは鈴川が
ターゲットにされるみたいです」

「因みに、そこに居る
雪村は何も言いませんからね」

ジト目で雪村を見た。

「静、
そぉいうことは止めろよな」

的木先生は雪村と仲いいのか?

「亮には関係ないだろう」

「あの、二人は仲いいんですか?」

俺の心の声を慎が口に出した。

「静とは幼なじみなんだよ」

へぇ~

それは初耳だ。

「雪村と的木先生が
幼なじみだなんて
初めて知りました」

「小学校からずっと一緒だ」

応えたのは意外にも雪村だった。

「初めて会ったのは
六歳の時だから、
もう二十年だね」

早いなぁと的木先生が言った。

「腐れ縁ってやつさ。
このことは他の奴らには秘密だぞ」

「わかってるよ」

言われなくたって言わないさ。

「それで、話しを戻すけど、
静、止めさせろよ」

染野のGAMEな。

「言ったところで無駄だから
止めなかったんだよ」

雪村はこういう奴だよな。

「その最初から諦めてる感じは
昔から変わらないよな……」

はぁ~と的木先生が
眉を八の字にしてため息を吐いた。

「雪村先生は昔から
こんな感じなんですか?」

慎の質問に的木先生は
雪村を指して言った。

「それはもう、
無気力でやる気のない奴だったよ」

「いらないこと言うな」

ムスッとして雪村が
すかさずつっこんだ。

「別にいいじゃないか」

一見、合わなさそうな
この二人が幼なじみかぁ~

「今度、二人の話
聞かせてくださね」

「しょうがねぇなぁ」

慎がそう言うと
応えたのはまたしても雪村だった。

「今度の土曜、空けとけよ。
亮もいいだろう?」

「勿論、
二人共、空けといてね」

休日に的木先生に会える!?

よっしゃ❢❢

「「はい」」

内心ウキウキの俺。

「それで、今週の
ターゲットは誰だって?」

「鈴川だって」

態と聞き返したな。

「そりゃ災難だったな。
あいつ走るの苦手だろう」

これっぽっちも
そんな事思ってないだろう。

目が笑ってるぜ。

「確かにな……
今週は染野の勝ちかな」

鈴川は体育が苦手で
とくに走るのはダメだ。

せめて、二日くらいは
逃げてほしいものだ。

「鈴川君大丈夫かな?
言い方が悪いけど
僕より遅いよね」

いえてるな。

「さぁ、どぉだかな」

こいつは本当に教師か?

「雪村、仮にも教師なんだから
逃げきってほしいくらいは言えよな」

「自分に正直なだけだ」

とことんマイペースだなぁ。

「俺、何で雪村が
教師になったのかわからない」

「僕も……」

今まで黙ってた慎が言った。

プッ、慎にまで言われてるよ(笑)

よく教師になったな。

「 俺が思うには
明日の朝には
捕まってるんじゃないか」

「僕は今日の帰りには
捕まってる気がする」

まぁ、運動部の奴らに
追いかけられたらアウトだろうな。

「笹山、お前何気に酷いな」

慎の言いたいことは
わかるけどな。

そんな慎の言葉に
教官室に笑い声が響いた。

「お前ら、さっさと
弁当食わないと時間なくなるぞ」

話しててすっかり
忘れてたが弁当の途中だった。

「ヤバっ」

「貴也、早く食べちゃおう」

俺たちは残りの
弁当を急いで食べた。

「じゃぁ、俺たち
教室に戻りますね」

名残惜しが仕方ない。

「またね」

教官室を出て
教室に戻った。