あの日、慎の家に着くと
やっぱりというか予想通り
おじさんが怒鳴っていた。

そんなおじさんをおばさんと
三人で説き伏せてお許しが出た。

四人で生活を始めて一ヶ月。

今日から新学期が始まる。

専業主夫になった俺は
早く起きて朝食と
二人分のお弁当を作っている。

それが終わると
雪村を起こしに行く。

時刻は五時四十五分。

春とはいえまだまだ暗い。

今日は入学式。

寝起きのいい亮と慎は
すぐに起きるからいいが
問題は雪村だ。

「おはよう、貴也」

まさか、あんなに寝起きが悪いとはな。

「亮はよ、雪村
起こしてくるな」

実は、慎が家を出るには
まだ余裕があるんだが
寝坊するよりはマシだろう。

まぁ、慎は起きてるだろうけど。

「貴也、おはよう」

ほらな。

「はよ」

根気よく待つ。

「雪村起きろ
遅刻したら洒落になんないぞ❢❢」

本来は短気な俺だが
雪村の寝起きの悪さには
半月で慣れた。

慎にも手伝ってもらい
雪村を起こす。

さて、そろそろ
時間がなくなってきたから
本気でいくか。

布団を捲り耳元でスマホのアラームを
大音量にして鳴らす。

「うるせぇ❢❢」

「しず、おはよう。

今起きないと遅刻するよ?」

確かにギリギリだな。

寝ぼけ気味の雪村は
慎に任せてキッチンに戻った。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

雪村と亮を見送り、
洗濯を回し、
洗い物をした。

「慎が出るには後一時間くらいあるな」

入学式は九時からだ。

家から学校までは三十分くらいだ。

いくら近場とはいえ、
此処から駅までは少々遠い。

「いってきます」

テレビの時計は
八時十分になるところだった。

「気を付けてな」

慎を見送って
丁度終わった洗濯物を
洗濯籠に入れてベランダへ向かった。

今日は天気がいいな。

入学式だからよかった。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

此処最近、慎が悩んでいる様子だ。

専門に入って二ヶ月、
イジメでもされているのか?

中・高校時代は
俺や染野がいたから
慎をイジメようとする奴はいなかった。

「悩み事があるなら
俺達に相談してくれ」

逡巡した後で話始めた。

「実はね、三雲大知っていう
新しい友達ができたんだけど……」

話の内容はこうだった。

◇新しくできた友人に夏休みに
海に誘われていること。

◇家に遊びに行きたいと言われたこと。

◇合コンに誘われたこと。

ということらしい。

海はともかく、
家に来られるのはちょっとな(苦笑)

合コンに関しては慎が興味ないだろうな。

まぁ、イジメじゃないならよかった。

「早いなぁ~
もぉ夏になるんだね」

俺達が付き合って二年。

月日が流れるのは本当に早い。

「海は行ったらどうだ?」

雪村が賛成するとは予想外だ……

「いいの?」

慎の目には戸惑いの
感情が見てとれた。