確か昨日、俺達といる時は
まだ苗字で呼んでたはず。

「そ、それは」

慌ててる慎、かわいいな(プッ)

「どうしたの?」

俺は不安と寂しさを隠して笑った。

「何でもない」

只でさえファンクラブのことで
心配をかけているのに
寂しいなんて言えない。

「そう? 何かあったら言ってね」

亮の科白に泣きそうになった。

ごめんな……

俺はたった今
自分の気持ちを隠したどころだ。

「わかった」

心の中で謝った。

悟られないようにもう一度笑った。

大丈夫、明後日からも頑張れる。

色々考えていたら
亮の携帯が鳴った。

「静からだね」

雪村?

「はいよ、どうした?」

来られなくなったのか?

「渋滞?

わかった、着いたら電話して」

なんだ、渋滞にひっかかってるだけか。

三十分後、再び亮の携帯が鳴った。

雪村達が着いたみたいだ。

「貴也、おはよう」

俺に抱き付こうとした
慎を雪村が止めた。

「いくら幼馴染みだからって
春日井に抱き付こうとするなよ、慎」

おぉ?

雪村が俺に嫉妬?

しかも、名前で呼んだよな。

一晩で進展したな(ニヤニヤ)

「静、笹山君に手出したの?」

慎は真っ赤だな。

「へぇ~

静は優しくしてくれた?」

顔をますます真っ赤に
しながら頷いた。

「よかったな」

二人をからかいなが
亮と俺はキッチンでお茶を淹れている。

夕方、亮に駅まで送ってもらった。

大丈夫、学校で話せなくても
また家に来ればいい。

明日から頑張れる❢❢

そう思っていたのに
あんなことが起きるなんて
知る由もなかった……

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

俺が亮ん家に
慎が雪村ん家に
泊まった二ヶ月後、
事件は起きた……

十二月になりめっきり
寒くなってきたある日に
それは起こった。

俺と慎を
狙っていたみたいで
学校帰りに拐われた。

最悪だ(怒)

連れて来られたのは
何処かの倉庫らしき場所。

主犯の検討はついている。

「あの時以来ね」

やっぱりな。

俺のことをひっぱたいた三年。

俺達を連れて来た奴は知らないが
他はうちの学校の生徒だ。

しかも、三人は三年ときた……

「お久しぶりでーす」

わざと棒読みで答えた。

「要件は一つ
二人の連絡先を
大人しく教えなさい」

教えるわけねぇだろう❢❢

「無理」

二人に連絡先を
教えてもらった時に
誰にも教えないと約束した。

「そう、じゃぁ
犯(や)られれば吐くかしら?」

一人の男が俺に近付いて来た。

「好きに犯(や)っていいわ」

バカだなぁ(ニヤリ)

犯(や)られようが
殴られようが
刺されようが教えねぇよ❢❢

携帯はロックを
かけているから大丈夫だろう。

「貴也❢❢」

慎が俺を呼んだ。

「あんたはお友達が
犯(や)られる
ところを見てなよ」

唯一同学年であろう女が言った。

こいつらバカだろう。

「大丈夫だ」

心配そうな表情(かお)をした
慎に微笑んだ。

¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢

「あんたゲイ?」

別室に連れて来られた
俺はこの男と二人きりだ。

「そうだ」

随分すんなり答えたな……

俺はこの男を知っている。

名前は石浜覚。

バスケ部の主将だったはずだ。

〔ゲイ〕なのは否定しない。

俺達の恋人も〔男〕だからな。