第一話∑仲間

夕方のコンビニは
今日も混雑していた。

色々な人の心が聴こえる。

上司の文句・夫への不満
子供の悩み等々
全て聴いてたら
こっちの神経がおかしくなる。

生まれた時から
人の心が聴こえていた。

一番最初に聴いたのは
誰の心だったか
既に覚えていない。

そんな日常の中で
俺と同じような
心の声が聴こえて来た。

《チッ、
どいつもこいつもムカつくぜ》

イライラしたその[声]が聴こえ
神経を集中させて
[声]の主を捜す。

いた!!

二つあるレジの奥側にいる
あの彼から漏れた[声]らしい。
俺より年上だろう。

顔は営業スマイルだが
心の[声]はイライラしている。

周りの店員も客も
彼がそんなことを
思っているなんて
わからないだろうな。

あの彼が
気付くか分からないけど
やってみるか……

店の端で目を閉じて
集中して心の中に
話しかけてみる。

同じ店内だから
多分届くはず……

頭と心の中で
何かが繋がった感覚を覚え
駄目元で彼に話しかけた。

《初めまして》

無難な挨拶からしてみる。

《!?》

ビックリしてるのが伝わって来た。

そりゃ、いきなり
心の中で
話しかけられたら驚くよな。

《いきなりすみません》

驚かせてしまったことに
謝罪を入れる。

《使えるってことは
君も心の[声]が
聴こえるたりするの?》

《はい、さっき
偶然貴方の[声]が
聞こえてしまったので……》

同じ能力(ちから)を
持った人に
出会ったの初めてだった。

《ぁはは、アレ聴かれてたんだ
いや、最近イライラすることが
多くてついつい悪態を
心の中で付いてしまったんだ
まさか聴こえる人が
居るとは思わなかったよ》

彼の言うことに一理ある。

普通は心の[声]なんて
聴こえるはずがないし、
だからこそ
上辺で付き合っていけるんだ。

《君、今店内に居るの?》

《はい、雑誌コーナーにいます》

自己紹介もしないまま
心の中の会話は続く。

立ち読みしてた
雑誌を置き、
炭酸一本と
おにぎりを三個持って
彼のレジに向かった。

近ければ近い程
心の[声]は
より鮮明に聴こえる。

『四八二円になります』」

財布から五百円を出した。

『十八円のお返しです
ありがとうございました』

言葉は営業用だが
心の[声]が聴こえてる
俺には可笑しかった。

笑ったのがわかったのか
心の中で抗議された。

《笑うなよ》

照れたような
怒ったような[声]

《すみません》

《謝りきれてないぞ?》

表情(かお)には出さないが
[声]は機嫌が悪かった。

《俺、後一時間くらいで
あがるんだけど直接話さない?》

まぁいいか。

《いいですよ
自己紹介はその時にでも》

《ありがとう》

本屋でも行くか。

此処からそう遠くないしな。

その旨を彼に伝えて
コンビニを後にした。

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『お待たせ』

一時間後、彼は本屋に現れた。

『改めて、初めまして』

言葉にして言うのは
初めてだからいいんだよな?

『はい、初めまして』

同一人物か? と思う程
仕事中と今の彼は
“声”も[声]も違っていた。

『まず自己紹介から
青羽朱雀・十八歳です』

人に聴く時は自分から。

礼儀の一つだと
昔祖母ちゃんが言ってた。

『ありがとう
吉柳白夜・二一歳です
宜しくな』

俺たちは本屋を出て
本屋とコンビニの中間にある
公園に行くことにした。

真夏の公園なんて
暑いだけだろうと
思うかもしれないが
この公園には
涼しい場所が二カ所ある。

大きな木があって
今日は風があるから
葉がゆらゆらと
揺れれていて暑さを
感じさせない。

『こちらこそ
宜しくお願いします』

『青羽君は何時から
心の[声]が
聴こえるようになったの?』

『生まれた時からずっとです』

十八年前、
この世に生をを
受けた時からずっと聴こえる。

吉柳さんの聞き方だと
彼は違うのかもしれない。

『そうなんだ、
俺はね小学校に上がる
直前にいきなり
聴こえるようになったんだ』

後天性か……

最初は戸惑っただろうなぁ。

『そうそう、
最初に聴いたのは
たしか母さんの[声]だったな
内容は流石に覚えてないけど』

お互い、
開いたままだから
頭の中で
考えるだけでバレバレだ。

『吉柳さんは
遮断できますか?』

『できるよ
だけど、疲れたり、
イライラしたりと
余裕がない時は駄目だな』

同じか……

『俺たち、とことん似てますね』

日が沈み始めた午後六時半。

『てことは、青羽君も?』

俺たちはまだ公園にいる。

『そうですよ、
時間大丈夫ですか?』

公園に設置してある
大きな時計を見ながら聞いた。

『俺は一人暮らしだから
全然大丈夫だけど、
青羽君は未成年だし
親が心配してるんじゃないか?』

果して、
あの人が心配なんて
してるか甚だ疑問だ。

『心配なんてしてませんよ』

昔、一度だけ
失敗したことがあった。

それ以来、母親は
気味悪いと言って
金だけは置いて行くが
近寄らなくなり
俺も適当に
フラフラするようになった。