私と連珠には
特殊な
能力(ちから)がある。

それは、人の感情が
文字として見えること……

だから、
幼稚園・小学校・中学校と
まともに誰かの目を見て
話せなくて孤立していた。

だけど、高校に入って
連珠と出会って、
初めて目を見て
話せる相手に出会えた。

何故なら、連珠も
私と同じ能力を
持っているからだ。

信じがたい
話だろうけど
私たち二人は
その人の目を見れば、
まるで、パソコンの画面に
映し出されるみたいに。

『麻魅瑠、
一緒に帰ろうぜ』

こうして、毎日
二人で帰るは日課だ。

お互い、力のせいで
クラスでは浮いた存在だから
私たちに声をかける
人物は誰一人居ない。

学校での私たちは
《変人》《根暗》など
そんな呼び方を
されているが
私も連珠も
気にしていない。

好きなように
呼べばいい。

『何時もの公園
寄ってこうよ』

ファミレスやコンビニなど
人が集まる場所は
私たちには酷だ。

『そうだな』

この公園は
私たちが来る頃には
誰一人居ないから
気が楽だ。

『ねぇ連珠』

ブランコに座り
空を見上げながら
話し掛ける。

『私たちの能力(ちから)は何で与えられたのかな?』

小さい頃、たまたま
目が合った知らない
大人の感情を
"見て"しまってから
連珠に会うまで
極力、誰とも
"直接"
目を合わさなくなった。

本当はいい感情を
持っている人だって
居るのかもしれないけど
未だ怖くて、
連珠以外の人と
目を合わせるのが怖い。

私は両親でさえ
目を合わせられない。

連珠は何年も
両親と会ってないらしい。

特別な能力(ちから)を
持った私たちは
"常識"という
枠を超えているけれど
"非常識"じゃない
と思いたい。

『帰るか』

隣のブランコに
座ってた連珠が
時計を見て言った。

公園にある時計は
六時半を指していた。

『そうだね』

立ち上がり
家に向かって歩く。

『連珠、
また明日ね』

連珠が住むアパートまで
一緒に行き、
鍵を開けて入ったのを
見送り一人、
家に向かった。

『ああ、じゃぁな』

所要時間は
学校から家まで
約四十分。

『ただいま』

家に着き、キッチンに
居るであろう母親に
向け言った。

部屋に入り、
制服から着替える。

父親が帰って来て
三人で夕飯を食べる。

目は合わせられないけど
家族三人の間に
険悪なムードはない。

連珠は今頃、
一人でご飯を
食べているんだろうなぁ。