顔を洗って着替え、祐護さんが作ってくれていた、お弁当を食べる。

「ほんと料理、下手だよね……」

摘まんだ卵焼きは持ち上げただけでほどけて落ちていく。
松岡くんの美しい料理とは大違い。

……ううん、松岡くんのことなんて考えない。

彼なんていなかった、私は彼と出会ってなんかない。

何度も何度も、言い聞かせた。

松岡くんは私に嫌がらせをしていた犯人なんだって。

でも。

――でも。

「だから、松岡くんのことなんて考えない」

慌てて、あたまを振って追い払う。
もう全部、忘れてしまわないといけないんだ。
だって私は――祐護さんを好きになったんだから。

「にゃー」