「そう、なんですね」

そっと、立川さんが私の背中を押した。
そのまま急な坂道を転がり落ちていく。

嫌がらせをしていたのは松岡くん。
猫の死体を送ってきたのも松岡くん。
セバスチャンに似せた猫を殺したのも松岡くん。

きっと、私を心配するふりをしながら心の中で笑っていたに違いない。

嫌がらせ犯に怒っていたのだってただの演技。
書きたくないという私を励ましてくれたのだって、ただの口からのでまかせに違いない。

「なんであんな人、信頼してたんだろう……」

落ちた先にはぽっかりと大きな穴が開いている。
暗くて深いその穴の中は酷く寒くて、思わず肩を抱いていた。

「大丈夫です、大藤先生には僕がついています」

「立川、さん……?」

ぎゅっと腕を掴まれ、顔を上げる。
レンズの向こうからこちらをじっと見ている立川さんと目があった。