さっき感じたことを、どんどんメモしていく。
これは、新しい作品の資料になる。

この作品には王子様も領主様も、執事だって出てこない。
私と同じ年、二十四歳の女性が主人公だ。

引っ込み思案で人付き合いが苦手な小説家の彼女が、恋をすることで人間として成長する。
そんな話。

要するに半ノンフィクションだけど。

でもいままでの、キラキラした理想の恋愛よりも、現実の生々しい恋愛を書いてみたくなった。

どういう心境の変化かはわからない。
でも、松岡くんが仮彼氏になって思ったのだ。

――ちゃんとこの恋を、作品として書き上げてみたい、と。

だからまだ、結末は決まっていない。
どうなるかは私の今後次第、なのだ。

「よろしいでしょうか」

「あっ、はい!」