「完敗だ」

放課後、おれは碁石の並んだ碁盤を眺めて苦笑した。

「まあ、本来の結果はこれってわけよ」

向かい側に座るおのっさんは嬉しそうに口角を上げた。

そうかあ、と宮原は目元に手をやる。

「おのっさん、やっぱり強くなって帰ってきたね」

「おれも、これでも練習したんだがな。何年も前のゲームだけど」

「おらも絶対レンが強くなってくると思ったから練習したよ。おらもゲームだったんだけど、たぶんレンと同じやつ。おらたちが小六くらいの頃に流行ったやつだろ?」

「そうだよ。『強い』に設定した機械相手に、ひたすら真剣に挑んでた」

「そうそう、おらもまったく同じ。でも物足りなくて、さっき宮原から連絡あったときは嬉しかった」

おらの相手になれるのはレンだけだと笑うおのっさんへ、恐縮ですと笑い返す。

「僕には天才同士の言葉は理解できないね」

苦笑する宮原へ、おのっさんは「そんなことねえよ」と笑う。

「当時は何回も解き直した中学の問題も、今は常識の範囲みたいになってるだろ? そんな感じだよ」

「基本的に努力だけでどうにかなる勉強と、そうじゃない競技を同じもののように説明されてもね」

宮原は肩をすくめて苦笑した。