許婚――幼少のときに双方の両親が結婚を確約した者同士――。
そんなもの、この時代には存在しないとどこかで思い込んでいた。
しかしそれが誤りであることはすぐにわかった。
助けてやりたいと思った相手にその存在があった。
おれに彼女を助けてやりたいと思わせた要因の一つだった。
入野 あかね(いりの あかね)――外見は少し幼くもあるが、一見は至極平凡な高校二年生の少女だ。
県立第三高等学校第二学年六クラス、出席番号五番。
通称を三高(さんこう)というこの学校内での彼女の基本情報はその程度だ。
席は中央の列、後ろから三番目でおれの隣である。