ジノと食事を終え、次の獲物を探していると1頭のレッサードラゴンが姿を現した。少々大柄ででっぶりとしており、威厳と言うか竜としての誇りを感じない。先にジノが飛び出すと速さと分身でかく乱、ブレスをかわしながら眼前で身を翻し跳び上がる。それを追って視線が上に向けられこちらへの意識が甘くなる。充分な距離まで接近したところでこちらに気付き、遅れて振り下ろされる爪を避けて腹部に大型杭打ち機であるブレーカーガントレットをたたきつける。大きな爆発音が響き、胴体に大きく抉られレッサードラゴンは絶命した。再び爆発の魔石に魔力を込める。
 毎回この作業が必要なのは手間ではあるのだが、威力と引き換えに大型化したブレーカーガントレットはレッサードラゴンを一撃で屠れる所まで到達。しかし痛みで右腕を押さえその場にしゃがみ込む。構造的に右手から右胸部の関節部まで完全に覆ったフルプレートアーマー、衝撃で肘と肩関節部が変形し腕に当たっていた。想定していたよりも反動を押さえ込めず関節部まで影響がでたようだが、肘と肩関節部を取り外し、腕を動かしてみると痛みもない。結局自分の体で押さえ込めるように体勢を変えながら使う事になりそうだ。レッサードラゴンを倉庫に押し込み、再び次の獲物をジノと共に探し始めた。


翌々日
「報酬と引き換え?」
「名は城崩し 鈴風」
「さぁ酒をよこせ!」

 要求どおり酒樽4つと干し肉を出すと剣を手渡された。手持ちを加えても2m切るまで小型になり、装飾もない実戦のみを考慮された少々幅広の諸刃の両手持ちの剣、通称ツーハンデットソード。両手で握ってみると重心が持ち手に近いのか以前よりもずっと扱いやすい。

「魔剣に近い造り?」
「魔力を流せば分かる」
「あんたが死ななきゃな!」

 言われたとおり僅かに魔力を流すとそれまで感じなかった強力な魔の息吹を感じる。目覚めたかのように急激に魔力を吸い取り始め、刀身が黒い影のようなものを纏い始めた。総魔力の2割弱を喰われたところで安定し、なんの力を持つかはっきりと判る。黒い影は怨念や呪いの様なもので剣を強化し強度を上げているようだ。

「必要ならまたきなよ?」
「あたいらが生きていたら」
「そのうちおっちぬけどな!」

 対話が出来てもダンジョンで生きる魔物であることに違いはない。ここに居ればいずれは冒険者に襲撃を受け、追い払えなければ倒されてしまう。出来ればそんな目には会って欲しくはないが、私が出きる事は殆どない。

「一緒に来ませんか? 私達の拠点に」

「ここが良いし?」
「人間は面倒」
「もういけ!」

 断られる事が分かっていても聞きたかった。頭を下げると部屋を後にし、ラクシャ達と合流して改築の終わった新たな拠点への帰路に着いた。